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最高裁判所第二小法廷 昭和32年(あ)1389号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人三根谷実蔵の上告趣意第一点は、違憲をいうが、その実質は訴訟法違反の主張に帰し(なお、裁判所に近接する監獄にいる被告人に対する召喚手続は、監獄官吏にこれを通知してなすことができ、右通知については、特別の方式がないのであるから、裁判所は各場合につき相当と認めるところに従い、在監人召喚簿、電話その他適宜の方法により前もって通知をすれば足りる。記録によると、被告人は昭和三一年一二月七日より尾道刑務支所に勾留されていたものであって、第一審記録表紙裏面中の公判期日指定欄には昭和三一年一二月一九日、期日欄には昭和三一年一二月二七日と記載され、下段の裁判長欄には裁判官の印章、召喚通知欄には書記官補の印章がそれぞれ押捺されているから、右昭和三一年一二月二七日の第一回公判期日は同年一二月一九日に当時被告人が在監中の右刑務支所の監獄官吏に通知され被告人には同支所の監獄官吏から口頭を以て通知されたものとみとめられる。「このことは、記録九七丁以下に編綴されている広島地方裁判所刑事首席書記官錫木五郎作成にかかる在監者に対する公判期日告知の有無についてと題する書面によっても明らかである。」かりに右監獄官吏の被告人に対する通知が遅延し、第一回の公判期日と召喚状の送達があったものとみなされる日との間に五日の猶予期間がなくても、被告人及び弁護人高崎訓治は右公判期日に出頭して異議なく弁論しているのであるから、その公判手続は違法であるということはできない「昭和二三年(れ)五七号同年四月二三日第二小法廷判決、集二巻四二二頁参照」。それゆえ、原判決の被告人の論旨第一点に対する判示は正当に帰するものであるから、所論のような違法は存しない。)、同第二点は、量刑不当の主張であり、被告本人の上告趣意は、単なる訴訟法違反、事実誤認、量刑不当の主張を出でないものであって、いずれも刑訴四〇五条の適法な上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条一項但書により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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